護衛の名目で、アネリと浴室の中まで入ることを許されているのは、メイドとパーシバルだけだった。
ただしそれも浴室内で何か緊急事態が起きた時に限る。
つまり入浴中のアネリは実質無防備。
もし浴室内でまた命を狙われたら……。
「お嬢様、少々お待ちいただけますか?」
脱衣所に入ったところでパーシバルに留められた。
「どうしたの?」
「安全確認です。」
そう告げるとパーシバルは浴場に入り、広々とした空間にぽつんと置かれた猫足バスタブに歩み寄る。
バスタブの内壁を手の平で何度か撫で、そして既に張られている湯に、自分の右腕を浸けた。
「…………。」
ドアの陰から様子を伺うアネリ。
パーシバルはしばらくじっとしていたが、やがて静かに腕を抜き取った。
「ご安心下さいませ。
バスタブに毒は塗られていないようです。」



