修行中のスーパーヒーローでもあるまいし。
そう思ったが口には出さず、アネリは余計な考えを振り払うために駒の動きを少し変わった手に切り替える。
勝負の横槍を入れられたせいでパーシバルは小さな苛立ちを感じた。
「ご忠告感謝致します。
ですがそう気を張られなくとも、お嬢様は私が責任をもって護りますので。
どうぞお気を楽に…。」
早い話が“黙って見てろ”。
しかしマドック刑事はよほど正義感の強い人間らしい。
「…アネリさんの予測も一理あります。
犯人が行動を起こすとしたら夜。ですがそれは裏返せば、今は襲撃のための準備をしているということ。
準備を要するということは、狙撃などの簡単に済む殺害方法ではなく、もっと手の込んだ……―――。」
一人で推理を始めたマドック刑事。
集中するのは大事だが、事が起こる前からそう神経を擦り減らすのは正しいこととは言えない。
何よりアネリとパーシバルは、このワーカホリック気味な刑事にまだ馴染めていないのだから、それが小さなストレスを生んでいた。



