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「犯人は期間を5日間と宣言したけど、あたしは、今日一日は何も行動は起こさないと思う。
少なくとも日中は。」
「なぜそう思われるのです、お嬢様?」
パーシバルが訊ねながら、チェスの駒をひとつ進める。
「テープのメッセージにあったじゃない?
“おやすみなさい、最愛のひと”。
あれって、これから自分が殺す人に対しての追悼じゃないかしら?
もう永久に目を覚まさないわけだから“おやすみなさい”。」
アネリが白駒を進める。
戦況は今のところアネリが優勢だ。
「犯人は手紙の最後に“それでは哀れなひと、良い夢を”って書いてた。
どっちも夜を連想させるわ。
時間を指定しなかったのは、ここでさりげなく夜を示していたから。
暗殺を始めるならあたし達が寝静まる頃だと思う。」
パーシバルを見上げると、彼は顎に指を添えて長考していた。



