「あいつは犯罪を何より憎む。
いつも真面目に冷静に対処し、どんな悲惨な現場にもきちんと向き合ってる。刑事の鏡だ。
だからオレみたいに現場でおちゃらけてる奴を許せない。
今回はあいつにとっちゃ初の要人警護であり、重大事件。
お嬢さん達にとっちゃ犯人なんざ取るに足らないことだろうとは思うが、あいつは自分の命を懸けてあんたらを護りたいと思ってんだ。
だから、まぁ…」
そこまで聞けば、言いたいことはおのずと分かる。
アネリは少し口元を緩めて言った。
「自分の身を大事にしろって言いたいのね。マドック刑事のためにも。」
「ああ。
使用人達は警察が全力で護る。
もちろん、お嬢さん達もな。」
トレイシー警部の頼もしい笑顔が、アネリの心に深く刻み込まれる。
「そこまで言われたら、お言葉に甘えないわけにはいかないわね。
ねっ、パーシバル。」
「お嬢様への危険が減ることが最善でございます。」



