アネリの予想通り、トレイシー警部は唇を開き、重い口調で語り始めた。
「実は早朝警察本部のほうに、予告状じみた手紙とメッセージテープが送られてきたんだ。
手紙の内容はこう。
“ウォーロック家に関わる罪深い人間達に粛正(しゅくせい)という手段を取る。
期間は5日間。一日につき一人、館内で死者が出るだろう。これこそが粛正なり。
なお、ウォーロック家に仕える者は館から一歩も出てはならない。
もし忠告を破り、逃げ出す者が現れた時、私はその者を粛正の対象から外さねばならなくなる。
それでは哀れなひと、良い夢を”……。
そしてテープには別の国の言語でメッセージが吹き込まれていた。
意味は…“おやすみなさい、最愛のひと”。」
テーブルの上に手紙のコピーと、ダビングしたテープが置かれる。
「…妙だろ、お嬢さん。」
「……………。」
これまで殺害予告なんて一度もなかった。
手紙の内容を見る限りではこれまでと同じ復讐目的だ。
恨みがあるなら奇襲すればいいのに、わざわざ予告を出すなんて。
おまけに……“粛正”とは…?



