「いいえ、ようこそ。
今日は何か?」
「いや実は…少し込み入った事情なんだ。どこかで静かに話せないもんかね?」
トレイシー警部は渋い顔をしている。
その表情から察するに、できるならアネリには知らせたくない事情のようだ。
危険性を含んだ話。そう推察したから、
「じゃあ応接間へどうぞ。
パーシバルも一緒でいいのよね?」
アネリは目だけでパーシバルに細心の注意を払うよう命じた。
「私はお嬢様の傍を離れるわけにはまいりませんので、同席をお許し下さいませ。」
また無数の傷を作るかもしれないが、パーシバルにとっては本望だった。



