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平和な休暇を乱すのは何も悪漢ばかりではない。
それをアネリは痛感することになる。
発端は朝一番の訪問者だった。
《アネリお嬢様、トレイシー警部と部下の方がお見えですわ。》
各部屋に備え付けられている室内無線から、淡々としたバネッサの声が聞こえてきた。
アネリはオドワイヤーへの「別荘の中だけで過ごす」の言葉通り、大人しく室内で勉強でもして暇を潰している最中だ。
しかし予想外のお客様の訪問を聞かされては招き入れないわけにはいかない。
「お通しして。今下りるから。」
そう答えるアネリの顔は、新しいおもちゃを見つけたように生き生きとしていたが。



