「…申し訳ございません。
お嬢様の清潔な持ち物が、私などの血で…。」
それではまるでアネリが抗菌の塊のようだ。
「わけの分からないこと言わないで。
さあ、別荘に戻りましょう。
トレイシー警部の言う通り、あたしもちょっとあなたをこき使いすぎたみたい。」
「とんでもございません!
私の存在意義はお嬢様のお役に立つことにあるのですから当然です。」
アネリの先導で、二人はもと来た道を引き返す。
脚を撃たれ、びっこまで引いているのに、パーシバルは少しも痛みを感じていないらしい。
肩も関節を撃たれたはず。しかし彼は自然に腕を振っている。
見れば見るほどパーシバルという男は不可思議だ。
そして、そんな彼に慣れきってしまっているアネリも、充分に奇妙と言える。



