「トレイシー警部、例の密売グループの取引場所が判明したそうです。
今すぐ現場に急行するようにと。」
唸りだしたトレイシー警部を呼んだのは、部下の一人である若手のマドック刑事だ。
きちんと整えた金髪と濃青のスーツが爽やかな印象を与える。
野性的なトレイシー警部とは対照的に、こちらは名門大学を首席で卒業したエリート…といったイメージも。
「おぉ、やっとか。思ったより遅かったな。
そんじゃあお嬢さん、デボンはこっちで預かるぜ。
オレは行くが、また何かあったら呼んでくれや。」
「ええ。お世話さま、トレイシー警部。」
アネリはちゃんとお別れを言うと、車に乗る警部のために一歩下がって道を開けた。
同時に、顔のすぐ横で手をパタパタと振る。



