そう告げるとバネッサはくるりと体の向きを変え、真っ暗な廊下を歩き始めた。

こつん、こつんと上品な靴音が響く。


しかしアネリはまだどこか迷いを抱えていて、


「…何もできずに、のこのこ戻って来ないでよね…。」


でも口から出てくるのは素直とは程遠い悪態。


それに呼応するようにバネッサも、


「ご安心なさいませ。
非力なお嬢様には無い知識を、わたくしが持っている。結果は火を見るより明らかですわ。」


皮肉をお返ししてきた。



暗闇の中でそれを聞いたアネリは、


「……………。」


声もなく、微笑む。