「…はあ。
マドック刑事がいなくなったと思ったら次はバネッサ。
パーシバル、あたし達は本当に退屈知らずね。」
アネリお得意の皮肉が飛ぶ。
だがいつもの皮肉に比べたらずっと軽い。
鬱陶しいことこの上なくても、彼らは自分を護ろうとしてくれてるのだから。
今更警護が一人増えたからと言って…。
「生憎ですがアネリさん。
私も再び警護の任に就くことになりました。」
「帰れ。犬め。」
コンマ2秒で暴言を吐いたパーシバルを、アネリは「まあまあ」と諌めた。
いつの間にかドアの反対側の窓の隅に、マドック刑事が控えていたのだ。
顔色は少し悪いが、身なりはきちんと整えている。
いつでも「集中!鍛練!」と言い出せる格好だ。
「………。」
アネリは頭を抱えたかった。
抱えるのを通り越して、いっそヘッドバンギングでもして暴れ回りたかった。
―――いや…、いくらなんでもそれは大袈裟ね。



