トレイシー警部は部屋の隅に椅子と小さめのテーブルを用意し、アネリの読書場所を作ってあげた。
そこは通路の邪魔にもならず、なおかつトレイシー警部の席に一番近い位置。パーシバルが傍にいない間、彼女が寂しくないように配慮した場所だった。
再び席に着いてモニターを確認し始めると、アネリもすぐに椅子に座り読書を始める。
「…………。」
トレイシー警部は、画面越しに反射して写るアネリを見つめた。
今は挿絵のない難しそうな本を読んでいる。
13歳なんて一番わんぱく盛りな年齢だろうに、画面に写り込む彼女は恐いくらい落ち着き払っている。
一人で何かをすることも同年代の友達と遊びに出ることも許されなくて、罪もないのに大人達に命を狙われる。
幼い頃からずっとだ。想像を絶する苦しみだったろう。
子供らしい性格を失ってしまうくらいの。



