「あれは何?」
機械を指差し、訊ねる。
答えは目の前からでもすぐ横からでもなく、浴場のドアから返ってきた。
「心肺蘇生装置。
まぁ、要は心臓の上で電気ショックを起こすアレですよ。お嬢様。」
杖を突きながら入ってきたのは、
「あ!」
「…げ!」
白衣と白髪に身を包んだオドワイヤー医師だった。
純粋な驚きの声を上げるアネリと悲痛な嘆きを上げるパーシバルの二人の顔を、オドワイヤーはニヤニヤと眺める。
「実は医務室にあったやつが昨晩から行方不明になってましてねぇ。
すぐ使う予定もないんで放っといたんですが、まさか殺人の道具にされるとは。ハッハ。」
「放っといちゃだめでしょ、無責任ね。
急患が出たらどうするの。」
アネリにぴしゃりと叱られてもオドワイヤーはカラカラと笑うだけ。
彼もまたそうとう肝が据わっているようだ。



