無用心と思いながらも、アネリはドアノブを握り、そっと押し開ける。
きいぃぃ…とドアの音がやけに響いた。
「…………。」
明かりの消えている浴室に入ったのはこれが初めてだ。
異質な不気味さを感じながら、アネリは勇気を振り絞り中へ入っていこうとする…。
「お嬢様、私が先に参ります。」
すかさず、パーシバルが留めた。
アネリに返事をさせるより先に、彼は脇をすり抜け前に出る。
大きな背中をまた見ることになり、アネリの不安は少しだけ治まった。
広い洗面所、広い脱衣所を抜け、二人は浴場の曇りガラスの前まで歩み寄り…、
パーシバルが電灯のスイッチを入れる。
明かりの点いた浴室内は命が宿ったように温かさを取り戻した。



