その瞬間、パーシバルの頭の中に「行水」という言葉が浮かんだ。
「お嬢様っ、そのような慣れないことをなさって、もしお風邪を召されたらどうするのです。私は認められません!」
とんでもない。お嬢様にそんな真似をさせるだなんて。
他に最良の方法が浮かぶわけもないのだが、それだけはさせるまいとパーシバルは必死になる。
が、アネリは食い下がらない。
「大丈夫よ。いつもより簡単に洗うだけ。
一人じゃ難しいから、そこはメイドの手を借りるけど。」
「……………っ!」
パーシバルは言葉を失う。
だが、もどかしさからではなかった。
「お嬢様…っ、な、なんと慎ましいのでしょう…!」
「…へ?」
少しの無理も贅沢も言わず、最低限の質素な方法で体を洗おうとするその姿勢に、パーシバルはひどく感銘を受けていたのだ。



