それよりも問題はボイラーだ。
この別荘は電力すべてを自家発電でまかなっているくせに、給湯には未だに旧式のボイラーを使っている。
停電のショックでボイラーのどこかが止まってしまった。
つまり、満足にシャワーも浴びることができない状況になってしまったのだ。
「…………。」
普通の人なら一日くらいシャワーを我慢するところ。
しかしアネリは小さい頃から毎日欠かさず、時には一日3回も入浴してきたため、今更習慣をねじ曲げることなんてできなかった。
なんとか良い手は無いか。
うーんうーんと頭をよじった結果、
「あ、ねえ、お茶用のお湯なら沸かせるでしょ?」
「え?は、はい。ケトルひとつぶんなら問題ありませんけど…。」
「じゃあお湯を沸かして、ちょうどいい温度まで温(ぬる)めたら浴室まで持って来て。
それで体を洗うから。」



