「はい。
では、こちらへどうぞ。」
せっかく久々に手を繋げたのだからと、珍しくパーシバルがアネリを先導して歩き出した。
必然的に、アネリは普段見慣れないパーシバルの背中を見ることになる。
「…………。」
アネリは無言のままパーシバルを見つめていたが、やがてぽつりと声をもらす。
耳を澄まさないと聞こえないほど小さな声だ。
「…………ねえパーシバル?
あなたは………、」
だが声に出したのはそこまで。
―――あなたは、いろんな表情を持ってるのね。
―――いろんな、感情を持ってるのね。
あとは心の中でつぶやく。
小さなアネリの小さな声は、前を歩くパーシバルには聞こえなかった。



