「お嬢様が大好きだからでございますよ。」
それはまるで、子供に言い聞かせるようなニュアンスを含んでいた。
アネリは顎に手を当てて考え、しばらく後に、
「ありがとう。あたしもパーシバルが大好きよ。」
ほんのり笑顔で、同じ言葉を返した。
昔は二人で言い合ったものだ。
母親を亡くした年端もいかない頃のアネリに、パーシバルは無償の愛情を注いでくれた。
―――私はお嬢様が大好きですよ。―――
…そう囁いてくれたものだ。
いつから、言わなくなってしまったのだろう。
懐かしさすら感じながら、アネリはパーシバルから視線を逸らしてドアのほうへ向かっていく。



