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「トレイシー警部、おはよう。
入ってもいい?」
自分の別荘の中で入室の許可を待つのはなんだか妙な気分だ。
グレーのワンピース、いつも通りの綺麗なお下げ髪を揺らして、監視室の前でアネリは返事を待つ。
ここはもともと使われていなかった空き部屋だ。
それこそ、主に2階から上の部屋を多く使うアネリは、一階の隅のこの部屋には滅多に足を踏み入れない。
あのがらんとした部屋がどのように模様替えされているのか。少し楽しみでもあった。
やがてドアが軽い音を立てて開かれた。
開けたのは、
「おはようございます、アネリさん。」
「!」
いつの間にかいなくなっていたマドック刑事だ。



