一方のアネリはまだネグリジェのままだ。
「パーシバル、着替えるから後ろ向いてて。」
アネリが一言命じれば、パーシバルは素直に回れ右をし、おまけにちゃんと両目を瞑る紳士ぶりを発揮した。
と同時に、アネリは着替えのために、部屋の隅に立ててある仕切り板の裏へ消えていく。
「…………。」
しばらくぼんやりと主人の消えた空間を眺めていたクレメンスだが、突然ハッと目を見開いた。
「お、お嬢様っ!
今お着替えの手伝いを…!」
メイドなら主人の身の回りの世話をしなくては、と考えたのだろう。
しかし、そう言って足を踏み出しかけたのも無用の心配に終わる。
「ん?何か言った?」
仕切りから再び顔を出した時、アネリはもうグレーのワンピースに着替え終えていた。



