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朝の入浴を終えたアネリは、4階建ての別荘の最上階の隅…父ルロイが娘のために特別立派に造らせた部屋に戻り、身支度を整えていた。
使用人を信用していない彼女らしく、着替えも自分一人で。髪を乾かすのも自分一人で。
慣れた手つきでテキパキ身なりを整える姿は令嬢の支度の風景とは程遠い。
膝丈に広がる濃紺のワンピースが辛うじて令嬢らしさを留めているけど、ムスッとした顔は相変わらずだ。
アネリは鏡に映る自分を見て、
正確には、そのニンジンのような赤毛を苦々しく見て、
「やな色。」
そう悪態をつく。
アネリはこの毛色の軽薄さが嫌いだった。
父のように、西洋人らしい綺麗な金色だったら…と何度夢に見ただろう。



