アイ・ドール


「だってさ、売り上げも改善しない、ましてもう潰しの利かない中途半端な店長の肩書きじゃあ何処も使ってくれないよ――だったら普通のパートの方が使えるって話だよね。店長さんも今更、パートに降格ってのもプライドがねぇ」



「うくっ――」


「しがみつくしかないよね、ここに――今が買い時ですよって持ち上げられて焦って買ったマンションのローンは定年後も払い続けなきゃならないし、金利も上がるかもしれないしね。年俸制と半端な成果主義の導入で給料もボーナスも上がらない――残業しても管理職だからオールカットだし、これから息子や娘さんの教育費とか諸々、カネがかかるってのにさぁ――死ぬに死ねないよね。会社にコキ使われて成果主義の亡霊にビクついて、定年退職しても雀の涙程度の退職金――辛いよね、マジでウルトラミラクルワークって感じだよねっ――」



「だっ、黙れっ――さっきから好き勝手に――俺達家族は助け合って生きているんだよ。妻は毎日パート、娘は週3日ファーストフードでバイトしてやり繰りして、息子だって高校に入ったらバイトするって言ってくれて――お前に何がわかるんだっ――ふざけんじゃねぇよっ――」