アイ・ドール


「どうにもならないよね。自動発注システムも結局、自分らで毎回定量の数値修正してさ――意味ないっつうの。人が足りなくて、品出しや商品管理もままならなくなってさ――アリス見た事あるもん。とっくに賞味期限の切れたカップラーメンとか、特売品なのにポップがついてなかったり――しょっちゅうだよねこの店。皆、魂奪われて脱け殻になっちゃって、可哀想だよっ――最悪、最低っ」


「――――」

「あれぇ、店長さん、だんまりかよ――」


「う、うるさい――俺だって苦労して人員を回しているんだ。お前に何がわかるんだ――」


 勢いのない川井出――よく見ると多田坂以上に白髪で、肌艶も悪く、顎やおでこには吹き出物が幾つか見られる。二人とも、まだこれからという世代にしては精神的に追い詰められている雰囲気を滲ませている――。

 が――今のアリスに二人の内なる苦悩など関係なかった。


「もう辞めたいでしょうマジで。やってらんないよね――でもさ、辞めても簡単に次の仕事なんか見つからないよね――ってゆうかぶっちゃけ、ないよね」


 アリスが万引きし、怒号を浴びせられていた出来事が、ねじ曲げられ始めてゆく。