「達成し得ない数値目標や、公平でない評価制度――使えない社員は早期退職させられるし、パートの労働時間の短縮。苦労したって逆に仕事量は増えてさ――かと言って人員は増やせなくて結局、足りない人員でやりくりして皆、追い立てられる様に仕事して、ストレス溜めてギスギスした人間関係になって、職場の雰囲気や店の感じも悪くなっちゃうんだよね――」
「――――」
「同情しちゃうよね――本部からは月末に計画納品とか言って、どんぶり勘定で沢山、商品納入されてさぁ、でも人がいないから整理もおぼつかなくて倉庫なんてメチャクチャになって――それでも、たまに本部のお偉いさん達が視察に来る時だけ、皆に残業させてまで慌てて体裁を取り繕う。この繰り返し――普段は残業するなって言ってるくせにね。悲しき管理職だよね。上層部から下からも何だかんだで突き上げられ、文句言われて嫌われて――辛いけど、逃げ道ないよね。だって、肝心な店の売り上げが伸びないんじゃどうしようもないよね、マジでっ――」
苦虫を噛み、弱気な表情を見せ始める川井出――この店の店員であるかの様なアリスの口ぶりには、真実も含まれているのだろう――。



