アイ・ドール


「んもぅ、超ついてないよ――もう少しでアリスの勝ちだったのにぃ、つまんない。最悪っ」



「さっきから聞いてりゃぁいい気になりやがって――調子に乗るんじゃねぇ」

 激しくテーブルを叩き、川井出が身を乗り出し叫んだ。


「あのさぁ、おたくら芸能人だから特別にこうやって個室で対応してるけど、こっちだってその気になればマスコミにこの事、話してもいいんだよ――それを一応、国民的なアイドル様ですから穏便に話を進めようとしてるのにさぁ、その辺のこちらの配慮も御理解して頂きたいですなっ」

 顔を赤らめ、怒りの収まらない川井出。



「たかが、チョコレートとソフトキャンディって言うけどさ、コツコツ商品売って毎日、毎日、社員やパート達が血を吐く様な努力して、お客様に頭下げてやっと、給料が貰える訳。スリルだなんて言ってお客様が全員万引きしたら、店が潰れるんだよ。わかってるのか――アンタ、本当にとんでもない事をしたんだよ」


 正論だ――反論の余地などない。




「あぁ、んもぅウザイなぁ――だからぁ、カネを払えばいいんでしょっ、カネをさぁ――」



 やってしまった――逆ギレだ――。