アイ・ドール


 茶色に染めた長髪には白髪が見え隠れし、Tシャツにジーンズ――耳にピアス、腕や胸元にシルバーのアクセサリーを身につけ、格好は若々しいが、白髪や雰囲気からすると、川井出と同年代で40代後半だろうか――。

 二人に躍動感は感じられない。


 アリスは、二人と対面するソファーに腕と足を組み、不貞腐れ気味に座っていたが、私の姿を見ると若干表情が和らいだ。

「どうぞ」

 川井出が着席を促す――二人に頭を下げ、アリスの隣に座った――。


 店内の有線放送が、「緩い」感じの軽音楽を奏でている――。



「おたくの事務所は一体、どういう教育をされているんですか――」

 アリスのふてぶてしい態度に目をやりつつ、川井出が切り出す。

「申し訳ありません――本人からもきちんと謝罪させますので――」

 再度、頭を下げながら言い、テーブルに視線を向ける――そこには、皮肉にも葵とモカ、モコが宣伝する両社の板チョコレートに、ブルーベリー味のソフトキャンディが3個。アリスが万引きした商品が置かれている。


「お金なら、ある筈なのに――」


 アリスの無責任で身勝手で稚拙な行為に落胆した――。