「高樹さんですか――」
ドアを開けると、髪はオールバックで、淡いピンクのシャツに細く赤いストライプの入った薄い黄色のネクタイに、アイボリーホワイトのチノパン姿の男性が立っていた――。
首から下げたストラップのネームプレートに、店長――川井出――その下に、「お客様最優先宣言」というキャッチフレーズが記されている。
私が詰所からすぐ来ないので、先の言葉には幾分か苛立ちが込められていた。
「この度は、御迷惑をおかけして大変申し訳ありません――」
深々と頭を下げた――私の謝罪に反応せず、背を向ける川井出――。
「本当に申し訳ございません――」
川井出の後ろ姿に再度、謝罪した――。
「こちらです――」
川井出が「応接室」と書かれたドアを開け中に入ってゆく――私も続く。
10帖程の空間に、人工皮革だろうか、所々革が剥がれたくたびれたソファーが対面し、間にテーブルが置かれている――窓はない。
「巡回保安員の多田坂(たださか)です――」
はっきりしない口ぶりで立ち、私と目も合わさずに言うと、川井出とソファーに腰を据えた――。



