アイ・ドール


「万希子さん、辞めるなんてあり得ないよ。歌の事で悩んでるならウチも手伝うから、一緒に頑張ろうよっ――――」

「踊りが苦手なら、流花と練習しよう――とことんつき合うから――」


 雪と流花がサポートを申し出る。



「じゃあ、キャロは英語」

「アリスも歌、教える」

 万希子さんを囲む輪に、仕事を片づけたキャロルアンとアリスが加わった――。


「英語は関係あるの――」

 詩織が突っ込みを入れる――。


「いいの、詩織ちゃん。前から万希子さん、英語を習得したいって言ってたし――それに、プロデューサーの意味不明な英語の歌詞なんて訳わかんないもん。だったらキャロが作詞する方が良くない――」


 皆、笑った――。


「ほらっ、皆こんなにも万希子さんを心配してるんだよっ。だから、辞めないよねっ――」


 詩織が念を押す。


 万希子さんの表情にはもう、苦悩に支配されていた面影は消えていた。瞳には少し涙が溜まっているが、悲しい涙ではない。


 夕日に照らされる涙――世界の何処にも存在しない宝石の輝き――。



「美しい――――」


 またしても、見惚れてしまう――。