アイ・ドール


「ごめんなさい――だって詩織は皆をまとめて行かなくちゃいけないから――私、傍にいてわかっているから――」

「んもぅ――」

 万希子さんの肩にかけた手に更に力を込める詩織――顔を赤らめ、詩織に応える万希子さん。


「万希子さんの悩みは、私達の悩みなんだから、これからは困った事や悩み事はちゃんと言ってね。わかった――」


「うん――」

 可愛いらしく頷いた。



 風が起きた――。


 ブースの重く厚いドアが勢い良く開き、その風圧が万希子さんの髪を揺らす――中からモカとモコが飛び出し、遅れて流花と雪が続く。

『万希子さん大丈夫、辞めないで――』

 駆けながら二人は言うと、モカは詩織と万希子さんの間に、モコは私の間に割って入り例によって腕を絡め、万希子さんの顔をまじまじと見つめる。割り込まれた詩織と私は一歩、身を退いた――流花と雪も、万希子さんの周りを囲む。

 もう詩織は手慣れた様子で、入口に設置されたドリンクサーバーでミルクティーを選び、啜りながら万希子さん達を微笑ましく見ている――。

 その佇まいは、堂々とかつ、母性的にも見え、リーダーにふさわしい光景だった。