リラックススペースの入口に仁王立ちでいる詩織――どの時点から話を聞いていたのかは不明だが、不満そうな表情で万希子さんを見る。
「マイマイの言う通りだよっ、万希子さんっ」
振り返った万希子さんに駆け寄りながら言い、肩に手をかけた。
「んもぅ、万希子さんはいつも自分で悩みを抱え込んじゃうんだからっ、それ、良くないよっ、うん、良くないっ」
強く、かつ優しさも染み込ませ、肩を揺する詩織。
互いに悩みを打ち明け、励まし合っていた二人――私も幾度となく目にしている。しかし、詩織にしてみれば、自分から万希子さんに悩みを打ち明ける事の方が、その逆よりも圧倒的に多い事が、悔しく、情けなく、いたたまれなくなっていたのかもしれない。
万希子さんは詩織の悩みに耳を傾け、含み、考え、答えを導き出してくれる――しかし、万希子さんからの相談事は察するに、たわいのない話ばかりなのだろう。
そこに万希子さんの気遣いが透けて見える様になった詩織は、万希子さんを癒せない自分と、意図の違う万希子さんの優しさが心の中で絡み合い、ここに至って先の表情と言葉に現れていたのかもしれない――――。



