アイ・ドール


「――――」



「医学の勉強をしている時も、これで良かったのか――と、もう一人の万希子さんが語りかけ、苦しめるのよ――」


「もう一人の――私」


「ふふっ、私も以前は外の世界との繋がりを遮断して引き籠もっていたのよ――」


「舞さんが、引き籠もり――」


 私の過去に万希子さんは驚愕している。もう、水晶の涙は流れてはいない。



「1年半もよ――毎日、毎日、嫌な想いばかり浮かんでとめどなく続いてゆくの――でも私は、社長や万希子さん達と出逢って自分を取り戻せたって感じている。まだまだ、頼りない歩みではあるけれど――」


「舞さん――」


「私はアイドルじゃないから、万希子さん達の苦しみをちゃんと理解しているかは正直、わからない。簡単に答えが得られる筈もない事もわかっている――でも、探し続けるしかない、私は。万希子さんには同じ目標と夢を持った仲間がいる。私もその一人だと勝手に思ってる――だから、迷ったり悩んだりした時は、もっと素直にメンバーや私を頼っていいの。万希子さんは、決して一人じゃないのよ――」




「そうだよっ――」

 後方で、力が漲った声が響いた。