私なりの、万希子さんを癒す言葉が見つからない――社長の言葉でも、ここに残ってくれるなら、今はそれでいい――。
「人と車があんなに小さく――」
「そうね――――走っている車、歩いている人、全てに違う人生がある。それぞれ現状に満足しているかはわからない――でも、明日はきっと良い日になると思って今を生きていると私は思うの――私もそう。でも、ここで辞めてしまったら万希子さんの明日が良いものになるとは私には思えない。万希子さんも本心ではそう考えている筈よ――」
エアコンからそよぐ冷風が、万希子さんの長い髪を緩やかになびかせている――。
「私も、社長に言われたわ。この場所でこうして仕事をしている事実を認めなさいって。誰しもがこの世界にいられる訳ではない――故に、自らの立場を理解し全力で取り組む事が、この世界に辿り着けなかった者達に対する責任と義務だって。もし、万希子さんが辞めて医学の道に進んだとしても、後悔すると私は思う――」
「後悔――――」
驚き、私を見た。
「そう――何故、あの時辞めてしまったのか。もっと皆といたかった――本当にお姉さんは許してくれたのか」



