「私が――必要とされて――」
「皆、万希子さんが好きなの――だから、辞めるなんて言わないで――――」
空は、既に淡いオレンジ色へと変化し、時の経過を知らせていた――。
ほんわりと温められた空気の膜をしなやかに裂く様に万希子さんは語り始めた――――。
「夢だったんです――」
心の中の大切な引き出しの鍵を開け、自らの想いの源を打ち明ける――。
「私には、双子の姉がいました――だから、モカちゃんやモコちゃんを見ていると、思い出すんです――でも、段々、悲しくなって――悟られたくないから我慢するんですけど、同時に励まされたりもするんです。それが、余計に可愛くて――――」
「私で良かったら、話を聞かせて――」
万希子さんは静かに頷く。
「こう見えて、小さい頃は私、明るく活発でした。よくアイドルの真似事をして姉さんを笑わせたりする内に一緒に歌ったり、踊ったりしていたんです――――」
遠い過去の楽しい思い出を懐かしみ、僅かに万希子さんの表情が和らぐ――。
「アイドルになりたいって、内気だった姉さんが言ったんです――」



