乱れた部分を私の手櫛で整えてゆく――その髪の隙間から、白い肌と緩やかに描かれる顔の輪郭が見える。
私の視線は輪郭から、唇、鼻、そして瞳へ――「はっ」とした。瞳から流れる涙に――。
滴が結晶化されたならば、もはや研磨やカットなど施す必要のない、透明で純粋な輝きを放つ「水晶」とも言うべき「涙」が流れている――。
「これが――本当の――涙――」
私がこれまでに流した涙なんて――まるで泥水――。
全てを浄化して、私の意識までも吸い寄せる万希子さんの涙――。
「すみません――舞さんにまで心配をかけてしまって――」
すっかり涙に見惚れていた私に、掠れた声で顔を上げる万希子さん。
「もう、謝らないで――」
「万希子さん」何故、彼女にだけ「さん」をつけ呼ぶのだろう――詩織だって、万希子さんと同じ年齢なのに――。
何がそうさせるのか――美しくなびく艶やかな黒髪。透き通る白い肌。大人びた容姿と雰囲気――。それら全てであって、それらの中に含まれない私の「魂」が感応する「何か」なのか。
「万希子さん」何故、私はそう呼び、彼女に惹かれるのか――。



