アイ・ドール


「社長なんて今、関係ないでしょう。文句があるならここに来て言ってみなさいよ――――女は面倒とか、何言ってるのよ。男の方がよっぽど面倒だわ――私が心を込めて愛情を注いでいるのに、素知らぬ振りで何も応えてくれない――そうよ、結局は自分の殻に閉じ籠もって逃げてしまうんだわ。あなたもそうなんでしょう。人との関係を拒絶して、都合の良いエリアから一歩も出ずに私達を攻撃する――傷ついた人の心なんて考えずに。でも、その先に一体、何があるの。希望の光でも輝いているとでも言うのかしら――――ねぇ、教えてよ、外に出るのが怖い、お偉いプロデューサーさん――」




「るっせえ――」



「何、聞こえなかったわ。何か言ったらどうなのよ――教えてよ。早く教えなさいよ――ウジウジ引き籠もってないで、さっさと教えなさいよ――」





「教えなさいよっ――」


 絶叫した――。


 同時に、テーブルにあった「何か」を咄嗟に手に取り、スピーカーに向け思い切り投げつけた――。



 気配を消したつもりでいるディレクターの頭を掠めた「何か」は録音ルームとを隔てている防音ガラスに、鈍い音を立て衝突する――。