アイ・ドール


「ふっ、大体何が覆面プロデューサーよ。もったいぶって腹が立つわ――――言いたい事があるなら直接彼女達の前に出て来て言えばいいでしょう。それが何よ、ネット回線だか回りくどい事して、自分は安全な所から訳のわからない御託並べて、万希子さん達が悩み苦しむ姿を何処かにあるカメラから見て笑っているんでしょう――――さぞかし楽しいでしょうね。でもその為に万希子さん達はあなたの意味不明な指示を懸命に理解しようと苦しんで――そんな事も感じられず、わからなくてよくプロデューサーなんてやっていられるわね――」




「――――」




「どうしたのよ、素人の私にこんな事言われて悔しくないの。悔しかったら何か言ってみなさいよ――――それとも、面と向かって私の前に姿を現すのが怖いのかしら――」





「はぁ――――ディレクターさん、社長呼んでもらえるぅ。もうさぁウザッたいよ、このマネージャー」



 そろりと腰を浮かし、私の方に振り返ったディレクターは、「あっ――」と小さく声を漏らし、何事もなかった様に向き直る。私の凄味を増した「気」と眼差しに圧倒されたのだろう――以後、自分の気配を消した――。