「ちょっと言い過ぎじゃないですか――」
立ち上がり、ディレクターの操作するデスクに置かれたスピーカーに言った――そこからプロデューサーの声が「鳴って」いたのだ。踞っている万希子さんがわかるという事は、何台かのカメラも設置されているのだろう――。
思いがけない私の「反抗」に、ディレクターは振り返って私を見る――流花と雪も、触れてはいけないモノに触れてしまったと、ドーナツを片手に落胆混じりの表情に変わってゆく――。
これまで誰もプロデューサーに意見した事がなかった事実を、この時知った。
「誰だぁ――今、文句言ったヤツ――」
「私です」
意を決してスピーカーに言った。
「んんっ、聞いた事ない声だなぁ――誰っ――」
「彼女達のマネージャーです――」
「あぁ、噂に聞く新しく入ったお美しいマネージャーさんですか――」
嫌味な表現だ――。
「私の噂なんてどうでもいいでしょう。それより、何なんですかクズ人間だなんて、万希子さんに失礼じゃないですか――プロデューサーならもっと他に言い方があるでしょう――」
万希子さんを辱めるなんて――許せなかった。



