アイ・ドール


 その度に――――

「すいません――」


「もう1度、お願いします」と頭を下げ、声の主やディレクター、流花、雪、そして私にまで万希子さんは謝罪を繰り返す――。


 万希子さんが謝る度、自信を失い、透き通った白く美しい肌が、魂の抜けた白さに変色してゆく様に見えた――。



「どうしたの万希子さん、調子でも悪いのかしら」


 流花の隣に座り、聞いた。



「万希子さん、真面目だから――」


 同情気味に流花が呟く。


 これまでは、コーラスやワンフレーズのパートが多かった万希子さんにすれば、初のソロパートが与えられたこの楽曲とファーストアルバムに賭ける思いは相当なものだろう――。


 でも、想いが空回りしているのか、真面目な性格も相まって、意気込みがあらぬ方向へと作用してしまっているのだろう――――上手く歌えない自分に苛立ち、私達に多大な迷惑をかけていると自らを追い詰める。しかし尚も悪い方、悪い方へと物事が進んでゆくので「何故」と、更に自分を追い詰める――。



 そう考えているに違いない――私にはわかる。何となく私と万希子さんは似ている気がしていたから――――。