隣のブースでは、万希子さん、流花、雪の三人が先行して仮歌の収録を終え、プロデューサーの手直しを受けている筈――2フロアにわたり大小20室もあるレコーディングブースの6室をヴィーラヴが使用し、他のアーティストが4室を使い、残りは稼働していない――。
詩織は38階にあるラジオスタジオで、1週間分の番組配信用の収録。アリスも同階にてティーン雑誌の取材と、初のソロ写真集の打ち合わせ――。
地下の撮影スタジオAでは、キャロルアンがファッション誌の撮影――スタジオBには葵が、ややいかがわしい男性誌とアニメ誌の撮影と取材を受けており、それぞれの活動を開始している――。
最終的に全員がレコーディングブースに集結し、全体録音という行程――私は時折、彼女達を見回り、時間になったらこのフロアへと皆を誘えばいい――。
何にも難しい仕事ではない――コピーをする事も、電話に出る事もない日々――。
これが、社長の言う「上の世界」の日常なのだろうか――。
「ねぇねぇ、今のどうだったマイマイ――」
モカの声で我に返る。
「そうね、少し抑え気味に歌ってみたら――」



