アイ・ドール


 企業は同化者を利用し、社長は企業を利用する――同化者は、彼女達を自らの希望の原動力と妄想し、カネを使う――。


 その意味において、この国の人間は互いに「良好」な関係を築いている――。



 40階、クリエイティブフロア。最新鋭設備が揃うレコーディングブースが並ぶ端にある休憩用空間のリラックススペースで私は広大な景色を今日も眺めている――。



『マイマイっ、そろそろ始めるってぇ――』

 腕組みし、遥か遠くを見渡していた私に、相変わらずの姉妹シンクロでモカとモコが駆け寄って来た。


 「マイマイ――」アリスが最初に言ったからなのか、いつの間にかこの呼び名になっていた。

 左にモコ、右にモカが腕に絡みつき、『キャハッ』と笑い、レコーディングブースへと誘う。

「わかったわ、行きましょう――」

 絡む二人とブースへと歩き出す――私の両脇でスキップをし出す二人――。


「楽しそうね――」私が問いかけると二人はにこりと私の顔を見上げる。

『だって、初めてのアルバムなんだもんっ――』

 弾んだシンクロ二ティーでスキップの動作を速める――。

「そんなに走らないの――」