故に、始めから煌めき、輝いて現れたヴィーラヴは、彼らにとって欝屈した生活と心の暗闇を安易に照らしてくれる存在――疑念などある筈もない――。
ヴィーラヴの光を全身に浴びさえすれば、本当の人生が始まり、希望を得てこれからも生きてゆける――と。
こうして「希望」の連鎖は広がり、ヴィーラヴは一躍、強者の頂点に君臨した――。
「でも、これからどうなってゆくのかは、私にも想像もつかないけれど――」
俯き、確信のない切ない声で社長はここに至るまでの昔話を締めくくった――。
「あの日から、もう1ヶ月が過ぎたのね――」
社長の言葉は正しかった――ヴィーラヴの活動は、このビルの中で完結していた。私の仕事といえば、予定に従ってビル内を彼女達と移動したり、マンションとの行き来程度のもので、恐らくは一般的なマネージャーの業務とはかけ離れている事もこんな私でも想像はつく。
ヴィーナスタワー。
今や、都内を流すタクシーを捕まえ、この行き先を告げて「わかりません」と言う運転手は存在しない程に認知され、巨額の利益を吸い上げる、眩ゆいガラスで覆われた繊細で美しき塔――。



