「マイマイっ――」
アリスの声が弾む――。
それを合図にメンバーが両脇に別れ、真ん中の「花道」を舞が歩く――。
容姿、躰つきが「劇的」に変化している訳ではない――。
しかし、全身から湧き出るオーラがこの場を程好く「締める」――。
私が「纏っている」代物とは格が違う上質なスーツを着こなして私に近づく舞――。
それはそれで美しかったが、あの「舞台」では「地味」だった黒髪が、緩やかなハニーブラウンに「塗装」され、高校時代からは幾分長さが増した――。
ガラスウォールから射し込む太陽の光が、舞の髪を妖艶に煌めかせる――。
その髪が「上品」に揺れ、ヴィーラヴさえも羨望の目で見つめている舞の全ての仕草が、あの頃の想いでと重なり、スローモーションで現状が再生されている――。
「何だろう――この差は――」
絶望と羨望――。
「夢子ちゃん――」
「夢子ちゃんっ――」
ぼやけた意識を叩く舞の声――。
「はっ――――」
「た、高樹社長――」
叩き起こされた意識が、私と舞の拭えない「格差」を認識し、偽りの呼び名を口から紡いだ――。



