アイ・ドール


真の人間でも、こうはいかないだろう――。



頂点を極め尽くしたというのに、奢らず、慢心せずに謙虚で美しい魂を宿し、最後の最後でスタッフ達の魂をも虜にする、心優しい仕掛けを施すアイドール――――。




私は、いつもアイドール達が気合いを入れる儀式を端で見ているのが好きだった――。



まして今、目の前に広がる美しい光景に、血液は沸騰し、細胞は踊り、私の魂を熱くする――――。




詩織は、「最後だから――」と私も輪に加わるよう勧めてくれたのだが、私は静かに首を横に振って誘いを断った――。



気恥ずかしい訳ではない――――私のアイドール達に誠心誠意で尽くしてくれるスタッフ達に対して、言い様のない後ろめたさという感情がよぎり、どうしても素直に輪の中に入れなかった――――。



「照れないで――」


スタッフの一人が笑い、私に言った。



尽くすスタッフとアイドール――――その輪こそ、最も「らしい」風景なのだ――――。





そんな彼らもいずれ、創られた「死」に至る――――。




純粋な心のみで、人間は生きてはゆけないのだろう――――。