ここに留まっていると嫌な女が加速しそうなので、現場監督と図面を広げ、協議しているツアースタッフに「後はよろしく――」と声をかけ、私はメインステージに背中を向けた――――。
出口にさしかかった時も、職人達の怒号が鳴り止む事はなかった――――。
外の世界は、粉雪が舞い、うっすらと地面を白く覆う――――時折吹く風が、覆った雪を舞い上げて、この世界と怒号と絶望が入り交じった世界とを隔てているガラスの自動ドアを激しく震わせる――――。
見上げた空は灰色に曇り、月の姿は存在していないかの様に、見る事はできなかった――――。
最終日の昼公演が終了し、夜のツアー最終公演の準備に、休みなく慌ただしく動き回るスタッフ達――。
彼らの表情には疲労感が伺えるが、それを凌駕する充実感、高揚感が皆の細胞を活性化させ、意識と体を機能させる――――。
既に最寄り駅である地下鉄東豊線の福住駅から札幌ドームまで偽人達が数珠繋ぎになり、交通の動脈たる国道36号線では局地的に渋滞が発生している――――。
いよいよ、最後の「儀式」が始まる――――。



