アイ・ドール


その「自殺」について、世間の反応は薄かった――――。


あっさりと報道され、あっさりと「流されて」ゆく一人の男の死――――これが現実なのだ――世間を騒がせた陰惨な事件も、男の狂気も、少女達の悲念も、時が経てば人々の記憶の塊から己の日常と都合の流れによって削られ、やがて風化、「劣化」してゆき、なかった事になってゆく――――。



当事者ではない私達は「こうやって」生き、日常を紡いでいる――――しかし、紡いでいたと認識していた営みも、そう遠くない日に全て失う――――何の前兆もなく、ある日突然に――――。その時彼らは、生きてきた「走馬灯」さえも魂に映し出す事はできない――――。






「覚悟はできたかい――――」


ミネルヴァの問い。





「何をそんなに思い詰めているのですか――」



気がつけば、仁王立ち気味で腕を組み、いつもの様に広大な風景に視線を泳がせていた新しい朝、万希子さんの声がそよいだ。まだミネルヴァには返信していなかった――。


「何でもないのよ――」



組んだ腕を解いた――――しなやかな髪をなびかせ、万希子さんが隣に並ぶ――――。