「はい――――」
「彼らの支えがあったから、シフォンに全てを支配されるのを瀬戸際で防いでいてくれたのね――――彼らに感謝しないといけないわね――」
明子の涙は、万希子さんの涙にも匹敵する様な、美しく透明な滴に変わっていた――。
故に彼女も真面目なのだろう――物事を、「適当」に流せず、思い悩む――――純真な心であるが為に、脆く、傷つき易い。傷を補修する為に別の「個」を創り、やがて取り込まれてゆく――――。
その先にあるのは――――哀れな死――。
「やり直したい――――自分の人生を――」
「あなたなら、やり直せるわ――だから、この世界に戻っては駄目よ。あなたが再びシフォンとならない為にも――」
可愛いらしく、「うん、うん」と無垢な瞳で私を見ては、自らに言い聞かせて明子は頷く――。
最後の仕上げに取りかかる――――。
「シフォンを完全に消し去るお呪いを、私がかけてあげるわ――――」
私と明子の唇が重なる――。
彼女は私を受け入れた――。
私は、明子の魂に毒を流し入れた――。
愛なる毒を――――。



