頬にあてがっていた両手を解き、明子の両肩へと移動させ、シフォンの霊体を体外に絞り出す様にゆっくりと揉みしだいた――。
「さぁ、シフォンを追い出すのよ。喰い尽くされる前に――築いた地位や、歌姫の称号も、捨て去るのよ――――そうしなければ、あなたの魂はいつまでも救われないわ――」
「全てを――捨てる――――」
「ここは、シフォンが作り出した世界――あなたの居場所じゃない――」
「私、ここにいてはいけないの――――」
「明子さんの住むべき世界は別に存在する――もう、頂点を嘘で維持し続ける重圧のない、静かで穏やかな世界があなたを待っているわ――」
「そ、そうね――私はここにいるべきじゃない――――」
シフォンの毒素が、涙となって溢れ出る。
「ゆっくりと、探すといいわ――何も困る事のない資産があるのだから。傷ついた翼を休め、のんびり暮らす事だけを考えればいいの――」
「――――」
「それとも、私の忠告を無視して、鏡に映るこのシフォンに取り憑かれたまま、偽人として生きてゆく道を選ぶのかしら――」
低く声色を変え、厳しい眼で脅した――。



