アイ・ドール


「勝ち負けなんて、関係ないわ――――本当に喜ぶべき事は、シフォンさんの、ヴィーラヴの歌に、踊りに、その懸命な姿に共感して、日々の生活の支えにしてくれている人達の存在に、感謝の心を持つ事じゃないかしら――」


「けっ――」




「シフォンさんの創り出す言葉、メロディー、歌声――――あなたの世界を信じる人達に示さなければならない。私達に見せる汚なく、醜い姿ではなく、愛に満ちた偽りのないシフォンさんを――――」



 また、下らない説教が始まったと言わんばかりに、眉をひそめ、小さく舌打ちして口紅を折り畳み式のテーブルに落とした――。




「アホらしい――何が愛だよっ、バーカっ。そんなの全部、嘘なんだよっ――――」

「そんなに励まされて、癒されたいなら、もっとワタシの曲を買えばいいんだよっ――買って買って、買いまくってくれりゃあ良かったんだよっ。つまんねぇ物にカネ使うんなら、ワタシの曲を一人、100億円位買えっつうの――――」





 この女――もはや手の施しようのない段階まで、自身の心と魂を偽人に喰われてしまっている――――シフォンのくすんだ瞳が、それを物語っていた。