アイ・ドール


 そうなのだろうか――自分では気づかない些細な変化も、社長にはいとも簡単に読み取れる能力が備わっているのか――。

 そんな私の様子を伺いながら一口、二口啜っていたコーヒーのカップをテーブルに置くと、社長はいきなり核心部へと話を進める――。


「彼女達のマネージャーを、やってみない――」


 全身が震えた――。

 いきなり――何を――。

 体内の血液が心臓へと集中し、鼓動は極限にまで速くなり、息苦しい。

 とにかく落ち着こうと、カップを手に取り、無理やりコーヒーを流し込んだ――。

「熱っ――」

 舌が敏感に反応し、連鎖して体が一瞬浮いた。

 この私の様子がおかしかったのだろう、社長は「ふふふっ――」と右手を口元にやり、笑う――。

「焦らすのもどうかと思って、いきなり本題に入った私がいけなかったかしら――」

「い、いいえ――」

「どうかしら、舞さんもここへ来て仕事にも人にも慣れてきたと思うの。だから、ここでもう一段、飛躍してみない――チーフマネージャーとして」

 私がチーフマネージャーに――何を言っているのだろう、社長の提案は私の予想を遥かに超えている――。