アイ・ドール


 間隔の長い不気味な音の隙間を突いて、伝わる命の声――――始めは一つだったものが二つ、三つと増えてゆき、やがて九つの微妙に音色とテンポの異なった生命の声が、私の耳から心、魂へと響く――もう、あの周期音など聞こえなくなっていた――。


「感じているわね――」


 私の右手から変化の読み取った礼子さんの左手が嬉しそうに力を増した――。

 それを合図に目を開けた私は前を見据えた。


「ここに戻った時から既に彼女達は目の前にいたのよ――――見えなかった彼女達を舞は感じた。命の囁きを聞き、認識した――それこそが愛なのよ――これで、舞の進むべき道は決まったわね――――改めて紹介するわ舞――――産まれ替わったヴィーラヴを。そして、舞のものになった彼女達を――――」


 黒い壁の上、下、向こう側から、ゆっくりと照明の光が、見えなかったものを照らし出す――。


「あぁ――――」

 快楽が頂点に達した様な声を、反射的に発していた――漆黒の世界から浮かび上がり、私の前に現れた新しいヴィーラヴ。


 曖昧で、小さな蕾だった彼女達に対する愛が、疑いもなく、確実にゆっくりと開花してゆく――。